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第73回 卒業式 式辞


第73回 卒業証書授与式 式辞
 式辞を述べる前に、私から一言お話しいたします。本日は、新型コロナウイルス感染防止の対応で、このように卒業生とそれぞれ一名の保護者様、そして在校生代表と教職員での卒業式開催となりました。また、歌はご清聴いただき、その他対策を講じての進行となっておりますが、皆様にはご理解とご協力を賜っておりますことに心より感謝申し上げます。
それでは、式辞を述べます。
ただ今、卒業証書を授与しました、第73期生、313名の皆さん、卒業おめでとうございます。皆さんは、平成30年4月に、夢と希望に胸を膨らませて、初めて本校の門をくぐりました。以来3年間、学習や学校行事、自治会活動、部活動、そしてボランティア活動まで、全力で取り組み、仲間たちとともに友情を育み、充実した高校生活を過ごしてきました。本日めでたく卒業の日を迎えることができましたことは、一人一人がたゆまぬ努力を続けてきた結果です。特に、今年度においては感染症対策により、年度当初から長期間の臨時休校を余儀なくなされました。みなさんは慣れないオンラインでの授業や課題提示などの対応に、懸命に努力しました。そして中止された体育大会や文化祭では、それに代わる新たな行事の企画を立案し、その実施を見事にやり遂げ、大成功を収めました。
後輩の1年生は入学式もなく遅れてスタートを切った高校生活、2年生は高校生活の最大の行事である修学旅行を中止され、動揺を隠せず、強い不安を募らせていました。しかし先輩である皆さんは、同じく動揺があったにもかかわらず、文化部発表会やTシャツコレクションなど、自分たちのできることを考え、協力してベストを尽くすという実行力を後輩たちに見せ、リードした姿はとても立派であり、後輩たちはそんな皆さんに大変勇気づけられています。また、学年ごとの実施となった体育大会では、実行委員のリードと皆さんの積極性に満ちた団結力と、実行力に圧倒され、その成長ぶりに感動しました。聖火という文集で、実行委員長の長尾君は、「うまく成功させられるのかという不安と楽しみの気持ちが半々だったのが、実行委員はじめ、学年のみんなの協力で、思っていたよりはるかにうまく進み、何よりとってもみんなが楽しんでいるのが嬉しかった」と素直な気持ちを書いていました。また、3年生にとっては行事の中止だけでなく3年間取り組んできた部活動の集大成となる最後の舞台を失い、そして進路実現においては入試方法の変更などで予想外の不安や苦労を強いられるという、皆さんへの直接的な心の負担は、私の想像を超えるものだっただろうと感じています。皆さん、本当によく頑張りました。その努力に対して心から拍手を送ります。
 さて、皆さんは、本日卒業の日を迎え、明日からは「高校時代」というステージから、次のステージへと歩を進めていきます。そのステージとなる現代の社会は、「予測が困難な時代」と、よく言われます。温暖化が象徴する地球環境の変化や、AIなどのテクノロジーの進化が劇的なレベルで進む中、私たちが10年後・20年後に生きる社会の有様は、誰にも正確には想定できないでしょう。今の思いがけない新型コロナウイルスによる感染拡大もそうでしょう。しかし、感染症の世界大流行は人類の歴史の中では何度も繰り返されてきた出来事であり、ちょうど百年前にも非常に大きな世界大流行がありました。いわゆる「スペイン風邪」と呼ばれる新型インフルエンザの大流行です。当時の世界の人口の1/3の6億人ほどが感染し、数千万人が死亡したと伝えられています。もちろん日本でも大きな流行がありました。つまり感染症の大流行も、大地震などの天災と同様に、必ず起こりうる出来事の一つだったというとらえをしなければならないのでしょう。そしてそれは、人類が乗り越えなければならない、大きな試練の一つであり、これまでもそれを達成した後には、新たな世の中の繁栄が訪れているのが事実です。時代が移り変わる過程において、繁栄と衰退を繰り返しながら社会は常に変容し、同じ状態が長く保持されることはありませんでした。
今、コンピュータ(AI)の能力は約20年後に人間の能力を追い抜くと予想され、それまでに、リモートワークが進み、半数近くの仕事が次第にAIにとって代わるという時代が来ると予測されています。 こうした予測も、この新型コロナウイルスの大流行でさらに大きく変わり、想定していたよりもずっと早く、急速に広がっていきます。そして、コロナの後は、以前の社会と同じスタイルに戻ることはきっとないでしょう。
みなさんは高校生活において、ひとりの大人としての人格が形成され、自分の生き方を模索し、目標に向かって挑戦しようする大切な時期の真っただ中で、コロナ禍による大変な苦労を体験しました。でもそのことは、これから訪れる変化する時代において自分たちが繁栄する社会を創造するチャンスが来たんだととらえてください。
大学や専門学校へ進学し、より専門的な勉強をする人、就職して社会人となり、経済的にも精神的にも自立する人、その道は様々ですが、未知の世界に対する不安や緊張感を、「自分で道を切り開いていくんだ」という高揚感に変えて羽ばたいてほしいのです。
そこで、そのために心がけて欲しいお願いが二つあります。その一つめは、「知的好奇心をずっと持ち続けてほしいこと」です。知的好奇心は新しいものを創造する力の源です。ぜひ自分の専門や得意分野にこだわらず、さまざまなことに好奇心をもってください。思いがけないヒントがあちらこちらに隠れていると思って間違いないと思います。そしてできるだけそれを人と話してみてほしいのです。意見交換したり共有や共感できたりするとさらに未来に向かっての新たな発見や発想が生まれるのだと思います。
二つめは、「失敗は成功の基」という言葉のとおり、何事にも失敗を恐れずにチャレンジしてください。これまでの正しいやり方であるとか、その決まった習慣にただ従事するだけではこれからの社会の変化に立ち遅れます。今の世の中で求められるのはスピーディーに転換・改善し、問題解決ができる力です。例えばフェイスブックやラインの新しい機能やサービスは、最初は穴だらけでしたが、利用者からのフィードバックを受けてどんどん改善するというサイクルを回しながら、結果的により良いものを生み出しています。それが今の社会の創造価値の在り方です。常に、創造する意欲をもってチャレンジしてください。そしてフィードバックしながら改善すれば良いとシンプルに考えて行動すればよいと思います。
私事ですが、私も37年間の教員生活をこの3月末で終え、新たな生活に挑戦します。今、皆さんと同じ思いでこの場にいるつもりです。これからいろいろなものに好奇心をもって、挑戦しようと思っています。73期生の皆さんは、私にとっては忘れられない最後の卒業生であり、学校生活だけでなく、同行した修学旅行での皆さんの楽しそうな姿も忘れることがないでしょう。そして最後の年に、共にコロナ禍に困惑し、今それを乗り切ろうとしながら、これから社会に出るチャレンジャー仲間です。お互いに頑張りましょう。そして、来年の阿倍野高等学校百周年記念式典や祝賀会でお会いし、失敗談や成功談をともに笑いながら語りましょう。楽しみにしています。
最後になりましたが、保護者の皆さまに一言申し上げます。本日はお子様のご卒業、誠におめでとうございます。保護者の皆様にとりましても、お子様の3年間の成長を前に、喜びもひとしおのことと拝察いたします。今、この場にいらして、お子様のたくましく成長した姿を見ていただけたことが何よりもうれしく思っています。コロナ禍の中で、お子様の健やかな成長を願って支えていただいたことではさぞかしご苦労も多かったと存じます。今日の佳き日を迎え、立派に成長されたお子様のご卒業に、教職員一同、心よりお慶び申し上げます。本日まで本校にお寄せいただきましたご支援、ご協力に深く感謝申し上げ、式辞といたします。

 令和三年三月二日

大阪府立阿倍野高等学校 第二十二代校長  古元 康博